日本クレアス税理士法人 大阪本部/上田公認会計士事務所様
医療・福祉・介護に特化した会計事務所として、昭和57年の開業以来、620件以上のお客様の会計や開業、経営をサポートしてきた実績を持つ。医療を中心とした非営利事業のお客様に特化し、それぞれの経営ステージを尊重した成長や継続という価値をもたらすことを経営方針に掲げる。
医療・福祉・介護に特化した会計事務所として、昭和57年の開業以来、620件以上のお客様の会計や開業、経営をサポートしてきた実績を持つ。医療を中心とした非営利事業のお客様に特化し、それぞれの経営ステージを尊重した成長や継続という価値をもたらすことを経営方針に掲げる。
日本クレアス税理士法人大阪本部様では、SmartReadをAI OCRエンジンとして採用している通帳特化のAI OCR「AISpectSR」(提供:株式会社 ASAHI Accounting Robot 研究所、以下AAR)を活用し、記帳代行業務の大幅な効率化を実現しています。
早くから通帳OCRの活用にトライしてきた同社が、どのようにして全社的な導入を成功させたのか、その裏側を執行役員の岩井様と、監査部の鈴木様にお伺いしました。
岩井様:日本クレアス大阪本部は医療・福祉に特化した会計事務所で、顧客の8割近くを医療クリニックや社会福祉法人、介護関係の事業所が占めています。20〜30人ほどの小規模な事業者様が多いので、経理担当者を雇用せず、弊社のような事務所に税務の顧問と併せて記帳代行業務をご依頼いただくことがほとんどです。
通帳コピーなどの月次の資料をお預かりして試算表を仕上げるまでが一連の業務ですが、お客様担当にあたる監査担当者でも月に50〜60時間、内勤の記帳担当部門はもっと多くの時間を仕訳にかけています。
会計事務所でも業務の効率化が求められていますので、弊社では数年前から「業務の改善プロジェクト」と称して事務所内の様々な業務の標準化や仕組み化に取り組んできており、通帳OCR導入もその一環です。
通帳OCRを知ったきっかけは3年ほど前に参加したRPAに関する研修でした。通帳読み込みがうまくできれば、弊社のように記帳代行業務が多い事務所ならかなりの作業時間を削減できるのではと考えて、そこからいろいろと調べ始めました。
鈴木様:私は今年2月に入社したのですが、この業界が全くの未経験だったので、簡単な仕訳でもすごく時間がかかっていましたし、数字のズレがあった場合には、数字を一致させるまでひとつひとつ見直すのにとても時間がかかっていました。自分の経験不足という面も含めて、なんとか改善できないかと、もどかしく思うところはありました。
執行役員の岩井 小夜様(左)と、監査部の鈴木 友里恵様(右)
鈴木様:流れとしてはこのような形です。
お客様からいただいた通帳コピーをDocuWorksに入れる
↓
AISpectSRでDocuWorks内の通帳を読み取る
↓
読み取り結果のExcel上でのエラーや残高をチェックする
↓
会計ソフトにCSVデータを取り込み、自動仕訳を実行する
↓
会計ソフト上で科目を適宜修正し学習させる
鈴木様:AISpectSRで通帳を読み取ると、Excel上で数字の不一致を視覚的に示してくれるので、残高を合わせる時間がかかりません。手入力だと間違いを自分で探すのにとても時間がかかるのですが、その必要がないのはとても大きいですね。またPDFだけでなくDocuWorksやJPEGなど色々なファイル形式を読み込める点もいいなと思っています。
AISpectSRで出力されたExcelでは、金額の読み取りエラー箇所が自動表示される(画像引用元:AISpectSR)
数字の読み取り精度も高いですし、会計ソフトでの仕訳の学習も進んできたので、元々私自身の作業が遅かったこともあって、作業時間は半分ほどになったという感覚です。周りの新人も積極的に使っているので、特に経験の少ない新人や、仕訳ボリュームが大きい場合にはとても効果が出やすいツールだと思いました。
同じプロジェクトの男性メンバーは、以前務めていた事務所では手入力での仕訳が当たり前だったそうですが、今はもうAISpectSRがないと作業できないと言っています(笑)。
岩井様:私自身で最初にAISpectSRを試してみたときも、自分でやるよりも2〜3割は速いと感じましたので、ベテラン社員でもその速さを実感してもらえるのではと思います。
岩井様:ベテランの方を中心に、これまでの仕事のやり方を変えることに抵抗を感じる人もいますので、精度が高くない中途半端な段階で利用を指示しても「自分でやるより遅くなるから使いたくない」となりかねません。ですので、プロジェクトメンバーが事前に様々な読み込みを試して、うまく読み取れる通帳とそうでない通帳を一覧に整理して、精度が高い通帳を優先的に読み取るといった工夫をしました。
またお客様からいただく通帳のコピーが薄かったり、大きく歪んでいたり、数字の部分にメモ書きが重なっていたりするとどうしても精度が落ちてしまうことも分かりましたので、そうしたエラーも潰していきました。
鈴木様:そのあと、記帳担当と監査担当を対象に、2回に分けて説明会を開催して、AISpectSRの仕組みや全体の流れの説明や、起こりがちな問題の対処法などをお伝えしました。
岩井様:先行してAISpectSRを試していた記帳部門ではベテラン含めて全員使っていますし、8月頃に全社に説明会をしてから今(※12月下旬)では社内のかなりの割合の人が使っています。
月々の通帳読み取り数については平均で600ページに達しています。思ったより順調に進んだという感覚を持っていますし、これからまだまだ増えていくと思います。
岩井様:今回の取材をきっかけに仕訳処理数を比較してみたところ、昨年8〜10月の3カ月で平均6,100件/月ほどの仕訳処理をしていましたが、今年AISpectSRを導入して同期間の仕訳数が平均7,700まで増えていたので、およそ26%向上していました。通帳以外の処理も含まれているので、通帳だけに絞ったら伸び率はもう少し高いと思います。これは想定以上の効果だと捉えています。
数字の読み取り精度が高いので、とんでもない間違いも起こりにくいですし、残高などを合わせる作業がかなり短くなっています。私たちは出てきた結果をしっかり眺めて、異常や変化に気づくことに時間を使えますので、より正確な試算表をスピーディーにお客様に提供できるようになっていると思います。
スピードが上がれば、一人あたりの担当件数を増やしたり、お客様への対応の時間を増やせますし、例えば1年分をまとめて記帳する必要があるような新規のお客様にも対応しやすくなっています。
岩井様:以前と比べて、明らかに残業は減りました。通帳読み込みだけが理由ではないと思いますが、年末に向けた一番の繁忙期でも19時頃にはほとんどのメンバーが帰宅しています。
鈴木もそうですが、この業界では税理士試験の勉強をしたり大学院に通っている人も多いので、そのようなプライベートとのバランスをうまくとって仕事を長く続けてもらえたらと思っています。
またせっかく勉強して事務所に入ってもひたすら記帳作業だけをしているとうんざりしてしまうと思いますが、このようなツールをうまく使って監査担当として本来やるべき仕事に時間を使えるという働き方は、弊社の採用力にもつながるのかな、とも思いますね。
岩井様:通帳読み込みに限らず、様々な業務の自動化を進めていきたいですね。
先日、AISpectSRで手書きの現金出納帳を試しに読んでみたのですが、精度高く認識できていました。Excelで書き出せるのでその後の加工もしやすかったです。表形式の書類は多いのでいろいろな場面で利用できるのではないかと思います。
また最近では、AARさんにご相談して、納税予測の作成をRPAで自動化することにもトライしています。これまで手入力でExcelで作成していたのですが、転記ミスが多発して確認や修正にだいぶ時間をとられていました。これを自動化できたら事務所全体でかなり効率化できます。
色々やりたいことは浮かびますが、私自身はそうしたツールを開発することはできませんので、皆さんにご協力いただきながら進めていけたらと思っています。
※通帳特化のAI OCR「AISpectSR」の詳細はこちら